私は神職の傍ら鍼灸師として患者の治療に従事しています。25歳の時に鍼灸師として中国各地の中医薬病院で研修させてもらいました。中医から親切に中医学の理論と技術を学びました。
当時の中国は文化大革命の主導者であった江青や張春橋らの四人組が批判され、国内は不安定な時代でした。そんな時に登場したのが華国鋒主席でした。中国国内では人民帽・人民服が当たり前で、店の従業員でも「同志」と呼び合っていました。
当時の中国は発展途上国でした。北京市工农兵病院で研修をうけていた時、百貨店でもエアコンの設備もなく夏は暑く冬は寒かったです。北京の街でも灯火管制が引かれており、夜間はタクシーやバスは無灯火で追い抜くときだけライトをつけていました。自転車での通勤や通学が当たり前で1時間以上もかけて学校や職場に通っていました。
それからしばらくすると河北省の石家荘(せきかそう)に移動し、ベチューン国際平和病院で研修することになりました。北京から電車で1時間30分のところですが、田舎でした。現在では製薬会社があったりして薬都になっています。
このような感じで中国国内を研修したのですが、一応、私は外国人なので、紙幣も外国兌換券で買い物をしていました。普通の人民元の紙幣と違い割高になっていました。たまに友人が人民元と交換してくれました。顔かたちが同じなので中国人と思われ安く買い物が出来ました。
中国人と生活して分かったのは一般的な中国人の性格は家族や親族、仲間を大切にします。親孝行は習近平も例外ではありません。習近平は母親の斉心さんをとても大切にしています。母親と散歩するときは必ず手をつなぎます。
ところで高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に対する中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事の「汚い首は斬ってやる」との投稿を巡り、呉江浩(ごこうこう)駐日大使を外務省に呼んで強く抗議し、適切な対応を取るよう求めました。
自民党と日本維新の会はそれぞれ政府に対し、薛剣氏を国外退去処分とする「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」指定を含む毅然とした対応を迫っていますが、これでは日中関係はますます悪化します。
中国で暮らすと、我が国の文化と国民性の違いが理解できます。中国人は自己主張が強く自分の考えや意見をそのまま伝えます。それがたとえ間違っても謝ることはありません。謝ると負けになるからです。
外交と言うのはお互いの意見を出し合あって、自分の意見を訂正したりすることはありません。国益に反することになります。中国には中国の考えがあり、我が国は我が国の考え方があります。お互いが主張しあうのが外交で常に平行線が外交です。外交に謝罪がないのも常識です。
前述したように中国人は自己主張が強く、交渉力に長けています。意見をしっかり主張するのが中国人です。わが国は島国で狭い国土の中で大勢の人々が暮らしています。国土が狭いので人と大声でしゃべることもできません。すぐに謝るのも特徴です。簡単に「ごめんね」を言葉に出すのも日本人です。
中国は日本の約26倍の国土に約14億人も暮らしています。少数民族も多く暮らしており、言語も300種類もあります。地域の文化も風習も言語も違います。そのためいろいろな考え方も混在しているのです。
そのため自己主張が強く、自分の意見や考えを明確に伝えることが必要です。中国は想像している以上に多様性に富んだ国です。
中国人の性格は、地域によって変わります。北京では、知識や教育に関心が高いです。教養が求められます。政治談議も好きですが、上海は経済の街なので効率を求めてきます。政治より経済のメリットを考えます。大阪とよく似た感じです。
そして上海でも北京でも一番共通するのは中国人の面子です。これは難しいです。日本人の面子はプライドの事だと思います。しかし中国人の面子は個人的な関係、地域社会、ビジネス社会、外交や安全保障の事に関しても幅広く影響します。日中間の相互理解を深め、関係改善を図る上で、面子の立て方が極めて重要です。
前述のように中国人の面子には、名誉や世間体、人徳といったことも意味します。自尊心や他人からの評価、社会的地位といったものを指す場合もあります。
中国人を側面から支配するのは面子だと持っています。ビジネスから友人関係から恋愛まで、人生のあらゆる側面を支配しています。中国では、どんなに相手が悪くても人前では注意してはいけない、と中国の友人に教えてもらいました。
人前で叱ることはどんなに相手に非があっても相手の面子を潰すことになります。それ以降の相手との関係性を悪くしてしまうのだということです。
今回の駐大阪総領事の発言で日中の外交や安全保障に至るまで幅広く影響を及ぼしています。ここは政界やマスコミもあわてずに落ち着いて日中の面子の立て方を探ることです。
関係改善を図る上で、この面子の概念を正確に把握することは極めて重要です。

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